帰省(22/01/08)
今日は天気が良かった。厳しい寒さから一転、気温もそれなりに高く、過ごしやすかった。小春日和という言葉は今日のためにあるんだろう。
明日の成人式のために、福井の実家に帰る。
特急券をケチって鈍行に乗ったのは正解だった。
車窓から見える冬晴れの景色は気持ちがいい。田畑にまばらに残っている雪は晴れた日に輝いて、こういう日ばかりはあの忌々しい雪も悪くない。
それに、電車の中では読書が捗る。家と違って姿勢が座ったまま固定されるし、他にやることがあまりないから集中できる。流れる景色を視界の端に入れつつ本を読むのは、結構贅沢な時間だと思う。
駅からはバスで帰ることになった。
駅そばを食べ、バスが来るまで近くのフリースペースでちょっとした作業をしていた。この場所も懐かしい。受験生だった頃、予備校での自習に飽きたら場所をここに移して勉強していた。もう2年も前になる。
バスに乗り、また本を開いて、しばらくすると着いた。バス停から実家までは2kmほどあるが、まぁ、このくらいは歩ける。道には雪はほとんどなかった。スノーシューズで帰ったのは失敗だったかもしれない。歩きづらい。
晴れた暖かい日に散歩するのは気分がいい。この場合、目的地があるから正確には散歩ではないんだけど、まぁやってることは一緒だ。陽や風が心地いい。
地元は盆地で、山に囲まれている。ひときわ大きな山は越前富士なんて大層な呼び名があったりする。小さい頃はこんな山なんかなんてことはないと思っていたが、大学に行くとその土地での山の不在が妙に気になった。いや、山はあるんだけど、高さが同じくらいの山々が連なっているから、あまり人格的なものを感じない。地元では、山に見られている感覚があった。超自然的な、神格みたいなものを感じていた。
正月の帰省ではずっと天気が悪く、山は雲だか霧だかに閉ざされていた。今回は晴れてくれたから、よく見える。聳え立つその姿を見て、ようやく「帰ってきたな…」と実感することができた。
ただいま。
明日も晴れるらしい。僕はこの山の視線を感じながら、成人式を迎える。